「山崎君どうしたの?」

彼女が目をこすりながら聞いてくる。


「あ、忘れ物...」


少しの間、動くことができなかった。


胸の奥深くに生まれた何かを認めざるを得なかった。


そいつは胸を強く締め付けて苦しいのに、


絶対に手放したくないものだった。


初めての感情だった。



この時はまだ、この正体に気づくことはできなかったのだけど...



結局、この日は部活に遅れてしまった。