教室のドアを開け、中に入ると

一人の女子生徒が教室の隅の席で本を読んでいた。


葛城麻友子だった。


彼女は陸上部の短距離選手で、

明るく、活発なイメージがあった。



だけど今日はいつもと違う。


読んでいた小説が感動ものだったのだろうか。

彼女の目が赤くなっていた。



春風が窓から吹き込み、

彼女の長い髪を揺らした。