〜 美咲 視点 〜
俺が椿姉の狂気的思考に気付いたのは
俺が5歳の頃だった
椿姉は、13歳で中学生になったばかりだった
椿姉は、小太郎というハムスターを飼っていた
結構歳をとっていたが、元気なハムスターだった
椿姉に一番懐いていて、椿姉は毎日のように可愛がっていた
でも、歳をとったハムスターはもうすぐ死んでしまうと医者に言われたその日の夜……
俺は、トイレに行きたくて夜中起きると……
『きゅん…っ!』
小さな鳴き声が聞こえ、すぐに小太郎の鳴き声だと気付いた
ペットは、小太郎しか飼っていなかったため……
鳴き声は小太郎しかいないと思って俺はすぐに小太郎のいる場所に向かって走った
小太郎のいる籠に着くと………
パジャマ姿の椿姉がいた
よく椿姉を見ると………
椿姉の手には、小太郎がいて………
椿姉は、小太郎の小さな首を締めていた
「な、なにしてるの……っ!椿お姉ちゃん!」
「シー。美咲、静かに
みんな寝てるんだから、静かにしないとダメでしょう……?」
俺が叫ぶように言うと……
椿姉は、小太郎の首を締めたまま
ゆっくりと俺の方を向きニコリと笑って言った
俺は、その表情を見てゾワリと背筋に悪寒が走り、何も言えず黙って椿姉を見ていた
『私をおいて、どこかに行っちゃう小太郎なんて嫌い
……………嘘だよ、小太郎、大好き
私は、こんなに小太郎が大好きなのに
小太郎は行っちゃうんだね……?
じゃあ、私の手で逝かせてあげる
嬉しいでしょう?小太郎
小太郎も私のこと好きなんだから
嬉しいよね?』
『きゅうん……っ!』
椿姉は、小太郎の首をゆっくり……
ゆっくりと締めると、笑顔を見せていた
小太郎は、嫌がっているのに
それを嘲笑うかのように、ゆっくりと首を締める椿姉が怖かった
『小太郎………?
あれ?もう逝っちゃったの…?小太郎…』
小太郎は、椿姉の手の中で
もうジタバタと動くことはなく逝ってしまった
『こ、小太郎……っ!!
嫌だよ、小太郎……っ!!』
俺は、椿姉から小太郎を奪うと……
息をしていない、動かない小太郎を見て
泣き叫んだ
椿姉は、そんな俺を冷たく見下ろしていた
両親が俺の泣き声に気付いて起きてきて
小太郎が死んだのに気づくと、俺を抱きしめてきた
『椿ちゃんも辛かったね……
小太郎は天国に逝ったから、悲しくないのよ……』
『うわぁぁぁあ……っ!お母さん…っ!』
椿姉は、母さんに抱きしめられていて
母さんの腕の中で泣いていた
俺は、椿姉が小太郎を殺したのだと言えなかった
言ったら……
次は、俺が殺されると思って言えなかった
それから俺は、椿姉には逆らわないようにしてきた
何があっても椿姉には喧嘩を売らなかった
だから、怖いんだ
顔を合わすたび、桜姉は椿姉とケンカしている
桜姉は、いつか殺されると思って
忠告をしてきたのに………
まさか……
椿姉が死ぬだなんて………
俺は信じられなかった

