急いでお風呂に入って散歩に出掛けた。


ゆっくり二人と二匹で歩く。


カイとハルはめったにリードを引っ張らない。


いつも私に合わせてくれる。


「雪、俺のこと知ってるか」


「?…総ですよね」


「名前じゃない。肩書きだ」


昨日初めて知ったばかりだから肩書きなんて知るはずがない。


総の目を見ながら首を振った。


すると総は安心したように、だけど、悲しそうに遠くを見た。


「俺は極道の人間だ。藤咲組の若頭をしている」


目の奥を揺らしながらそう言った。


「そうなんですか」


へー、と思いながらそう言うと、何故か総は目を見開いた。


「怖くないのか」


「…だってそれが総の全てを決める訳じゃないでしょう?」


微笑みながら言うと、泣きそうに顔を歪めた。


きっとこの人は、いつも孤独だったんだな…。


「もう1人じゃありませんよ」


安心させるように言うと、腕を引っ張られ気付いたら総の腕の中だった。