私はあなたに恋をした

「悪い！俺ちょっと逃げる！」



「え？煉？」



ダッシュで教室を飛び出して駆けて行く煉に茜は一人教室に残された。
ドタドタと響き渡っていた足音はすぐに茜のいる教室の前を通過していく。



「煉！！大人しく部活に来い！！」



そんな怒鳴り声と共に煉の逃げた方へと足音が去って行って、茜は残念がった。
あの足音は大輔が煉を迎えに来た音のようで、「あのまま煉がこの教室に残っていてくれたら至近距離で大輔に会えたのに」と思いながら帰り支度を済ませる。

その時、ガラリと開いた扉の音に視線を上げると茜は固まった。
学年で誰よりも目立つその身長、見間違えようもないその人はまさしく茜の思い人だった。
教室に入ってきた大輔は、眉間に皺を寄せながら茜につかつかと近寄って来ると、目の前に立ってジロジロと見た。