鈴菜は何かを無理している。


確証はないけど、そんな感じがした。


さっきから僕に向ける笑顔は、病院の先生に対する乾いた“愛想笑い”と、似たようなものだった。



今日の鈴菜には違和感があった。




「鈴菜、お前どうした?

なんかあったのか?」



なるべく相手に気を使わせないように気をつけて言った。


正直に僕に話せるように



「………………

……柊也……

さすが…だね…柊也には隠し事できないや…」



少してれたようにこっちを向くと


すぐに顔をゆがめて俯いた。



「また……

検査の結果がよくなかった……」



ポタっと彼女の掛け布団に涙がこぼれる。



やっぱりか……


さっき言おうとした事だった。


予想はついていた。


何かあった時は本人が無意識でも、


何かしらのサインがある。





「早くて半年

長くて……1年」





えっ……、



いきなりボソッと彼女が口にした言葉の内容に



耳を疑う。


こんな事は予想してなかった。



予想したくもなかった。



知りたくなかった。



「柊也……、

ねぇ柊也、どうしよう

あと長くて1年だよ?


私まだなんにもやってない


いっつも笑顔を絶やさないでいてくれるお母さんにも、


こうやって毎日御見舞に来てくれてる柊也にも、


なんにもお返しできてない。


“ありがとう”なんかじゃ足りないくらい感謝してるのに、


たくさん感謝してるのに、


たった1年で返せないくらいに、

たくさん感謝してるの…」




ぼろぼろと涙をこぼして鈴菜は言った。




鈴菜の家は母子家庭で、


父親は鈴菜が小さい時に亡くなった。


僕と鈴菜が出会った時にはもう既に亡くなっていたらしい。


そのためか、

鈴菜はおばさんのことが大好きで、


おばさんに負担がかからないようおばさんの前では


ずっと笑顔だ



こんなふうに涙を流すのは僕の前だけで



だからこそ僕は


彼女が我慢しないよう、


毎日こうやって彼女に会いに来ている。