「じゃあお母さんもう帰るね

家帰ってからじっくり見ようかな

じゃ、柊也君あとよろしくね」


そう言ってお母さんは病室から出ていった。



「鈴菜」


さっそくいつもより少し怖い顔をしながら私の名前を呼んだ。


「な、何?」


「大丈夫か?」


「う、うん
大丈夫だよ」


「本当か?」


「さっきからちょっと胸が苦しいかな」


「大丈夫じゃねーじゃん」


「…すいません」


「よろしい」


「…けほ


……大丈夫だよ」


「今大丈夫じゃなかったじゃんか」


「うん……」


「見栄はるなよ

僕には正直でいてくれ」


「わかった」


柊也の言葉は押し付けてるんじゃなくて


心配してくれてるからこの口調なのだと知ってる。


心配してくれてる時ほど柊也はぶっきらぼうになる。


そういうところが可愛い。


わかりやすいんだもの


柊也は優しいな


柊也と一緒にいると


好きが溢れ出てくる。


思わず「好き」って言っちゃいそう。


でも言わない


言ったら私が死んだ時に柊也が罪悪感を感じちゃう。


最後くらい望み通りにしてやればよかった


って


そんなふうに思われるのはイヤだもん。



好きになって欲しい。


恋人になりたい。



そうは思うけど


それ以上に今の生活を楽しんでるから


そのままでいいかなって思ってる。