周りのサラリーマンなんかは、私たちの会話を聞いて「若いっていいね〜」と呑気に笑ってるけども。
私、オバサンって言われたんだよ。
虚しくて悲しいわ、若さだけは自分じゃどうにも出来ないし。


母親と連絡がついたらしい新田さんは、頬杖をついて若干偉そうな態度で私に笑いかけてきた。


「でもオバサンの料理の腕だけは認めてあげる。美味しかったから」

「そ、そ、それはどうも……」


褒められた気はしないんだけど、一応お礼だけは言っておく。
横目で辺見くんを見てみたら、申し訳なさそうに苦笑いしていた。








迎えに来た母親は、辺見くんにペコペコ頭を下げていた。
「申し訳ありません、うちの娘が……」とか、「お食事までごちそうになってしまって……」とか、それはそれは恐縮し切った様子で。


当の辺見くんはニコニコ笑顔で彼女たちを見送っていた。
もちろん新田さんはムスッとした顔をしていたけれど、最後には


「ありがと、先生。また明日ね」


と手を振っていたからひと安心。


お店のイスに掛けていたリュックを背負った辺見くんが、オーナーや涼乃さんに声をかける。


「お騒がせしました。間に合ったらまた明日来ます。………………今度は僕ひとりで」

「あらあら、いいのよ〜!先生ったらおモテになるのねぇ〜」

「いえ、ちっとも」


綺麗な90度の直角なお辞儀をして、彼はお店を出ていった。