如月さんと兵藤くん。





「それで?」



校門を出たところできかれた。


いつからだったかな?


私がこんなに表裏があるのは。


まあいいや。



「さっきはね、ストレス発散してたの。私、よくお父様に連れられてアメリカの射撃場に行ってたの。」


「射撃場?」


「うん。そこで銃の扱い方とか教わってね。それでああいう“撃つ”のが得意になったの。」



本当はこの話はお父様にあまりしてはいけないって言われた。


まあそりゃ、こんな物騒な人だって知ったら誰も近づきたくないもんね。


でも、兵藤くんは特に驚きもせず、相槌を打ちながら聞いてくれてる。



「だからさっきのはちょっとした仕返し?って感じ。」


「すげーな。ゴム鉄砲であの距離命中させたんだから。」



ほんとに感心しているようだ。


こいつは馬鹿なのか。


危機感とか感じないのか。



「でも私がこの本性出してるのって今のところあんただけなんだから、絶対誰にも言うなよ!」


「わかったって。だけどよかった。」



よかったってなんのことだろう?



「如月さんっていつも完璧ってイメージだから、人間らしいところがあってよかった。」


「その……如月さんっていうのやめて。それ表のままみたいでいやだ。」



こんなこと言ったのはじめてだ。



「じゃあ葉月?」


「うん。」


「じゃ、俺も桜介でいいよ。」


「桜介。」



なんか恋人みたいで恥ずかしい。


でもなんか嬉しい。


たぶんそれは名前で呼び合うような友達がいなかったからだと思う。



「桜介。友達になってほしい。」


「いきなりどうしたんだよ?」



こーゆー友達ほしかった。


素で語り合えるような。



「こーゆー友達ほしかった。」



思っていた事をそのまま口にした。



「そっか。別に俺でいいなら。」