「目の前に辛い思いをしてる奴がいるなら助けてやりたい、救ってやりたい。そう思ってるだけだ」
そう言ってたな。
「………」
あたしの言葉に複雑な表情になってしまった男にふっと微笑する。
「昔、ある人にそう言われたんだ。そうやって、あたしも救ってもらった。その考えがあたしは好きなんだ」
「だからって…泥棒しようとした俺なんか…」
辛そうな、泣きそうな顔で言う男にころころ表情の変わる男だなと思いながら
「その若さで借金背負ったら間違いくらい犯すさ。そんな些細なことは気にするな」
「けど…俺…」
拳を強く握り唇を噛み締め必死に泣くのを我慢している男に微笑して近づく。
「そう思うなら、そんな些末なことを気にしなくて済むくらいこれからを必死に生きれば良い。胸張ってあたしの隣を歩けるくらいになれ。
…まぁこれもある人に言われたんだけどな」
悪戯っぽく笑って男の頭を優しく撫でる。
そんなあたしを見つめたまま泣き出した男に苦笑する。
「泣きたいときは我慢すんな。こんなに手ぇ強く握って唇まで…血出てんじゃねぇかまったく」
手を撫で、唇に指でそっと触れて血を拭う。
「自分を傷つけることはするな。自分を卑下する必要もない。おまえはおまえ、他は他だ。あたしが助けるんだ、あたしの目に狂いはない」

