「あ、洗った…」
ゆっくり扉を開けて出てきた男は呟くような声でそう言った。
「これで拭け。服はとりあえずこれでも着てろ」
バスタオルを手渡し、着替えは一度男に見せてから棚に置く。
「おまえさ、なんで泥棒なんてしたの」
「………」
「なにに困ってんの」
無言で動きまで止まってしまった男だが、気にせず気になったことを投げかける。
「はぁ…答えねぇと解決方法も見つかんねぇだろ」
「解決、方法…?」
あたしの溜息とともに出た言葉に男はゆっくりと顔を上げた。
「そうだ。
大抵のことならなんとかなる。
これ以上おまえが罪を重ねないように助けるくらい造作もない」
「そんな簡単に…」
「簡単だ。
衣食住を整えたい、学校に通いたい、娯楽を楽しみたい…
なにをするにもまずは金が必要だ。
金は全てを叶えてくれる」
男の唸るような言葉を遮ってそう断言した。
「なにが言いたいんだよ…?」
こちらを怪訝な顔で見つめ、尋ねる男に意地の悪い笑みを向ける。

