~side 鴉~
「…佐伯原、潰してやろうか…」
夢に魘されハッと目を開けると目前にとてつもなく冷たい顔でそんなことを言う、俺を助けると言ってくれたあの人がいてギュッと目を瞑った。
俺が目を開けたことは気づいていないようで、絶えず撫でられる頭。
その手つきは先程の顔が嘘のように優しく暖かい。
その心地よさに微睡み始めた俺の耳に届いた言葉。
「にしても…鴉みたいに綺麗な色だな…」
それと同時に掬い上げられた一房の髪の毛。
この人の一挙一動にドギマギして、一言一言に胸が苦しくなる。
サラッと撫でられる頭に神経が集中して、ふわりと触れてくる手のひらに、指先にどきりとする。
「鴉…またあとでな…ゆっくり休め」
そんな言葉とともに額に落とされたのは優しく甘い口づけ。
そうして部屋を出ていくあの人。
あぁ…あの人はなにもかもが美しいのだろう、いや、美しい。
その見た目も、仕草も、言動も。
全てが俺の心を締めつける。
俺を掴んで、絹糸のように美しく蜘蛛の糸のように強い糸で絡めて縛りつけてくる。
俺を逃がさぬように、放さぬように。
いや、俺が望んでそうなっているのかもしれない。
そうしてくれれば良いと、そうして欲しいと。

