「…っと…」
男を優しくベッドに寝かせて布団をかけてやる。
少しすると眉間に皺を寄せて魘され始める男。
「…ゃ…やめて…頼むからっ…」
安心しきった幼い寝顔が目の前で一気に苦しそうに歪められた。
「…こんなあどけなくて可愛い寝顔をする奴を苦しめるなんて…佐伯原、潰してやろうか…」
こいつのように誰かが、二度と辛い思いをしないように。
夢に魘され布団をキツく掴むまだ名も知らぬ男の頭を優しく撫でながらあたしの表情は冷えきっていたことだろう。
名前も素性も知らなくても、あたしはこんな無邪気であどけない奴を放っておくなんてことはできない。
自分にも他人にも甘い女だ、あたしは。
気に入らない相手にはどんな残酷なことでもできるだけ。
「にしても…鴉みたいに綺麗な色だな…」
先程から撫でる度に綺麗な黒髪だとは思っていたが、手をくすぐるふわふわの猫っ毛は黒よりも黒く、なのに時折蒼のような碧のような色に姿を変える。
本当に鴉の羽のようだ。
確か烏羽色、というんだったか。
「鴉…またあとでな…ゆっくり休め」
男を勝手に鴉と呼んで額にキスを落として部屋を出る。
とりあえず佐伯原を潰す算段をつけなくてはならない。
まぁあんなところわざわざ手を回さなくても物理的に潰してしまっても良いのだろうが。

