・・・何かの金属音で目を覚ます。
私は死んでいなかったようだ。
体を見ると、縄で縛られていた。
もがいても解けない。
一気に恐怖が私を支配する。
助けて!そう叫ぼうとしたが、口にガムテープを貼られていて声を出すことができない。

しばらくじたばたしていると、目の前の扉から誰かが入ってきた。
芦川さんだ。
芦川さんはさっきの包丁よりも切れ味が良さそうな包丁を持っていた。
・・・いや、さっきと同じだ。
もしかしたら、何かの金属音は包丁を研ぐ音だったのかもしれない。

芦川さんは包丁の切れ味を確かめるように、近くに落ちていた鉄の棒を拾って、刃を当てた。
それはいとも簡単に切れ、芦川さんは満足したように微笑んだ。
芦川さんは乱暴に私の口に貼っていたガムテープを剥がした。
口とその周りがヒリヒリする。
とりあえず喋ってもいいということなのだろうか。
「あ、あの・・・」
恐る恐る声をかけると、芦川さんは思いっきり私の足を踏んだ。
でも、体重が軽いのかあまり痛くはなかった。
まあ、喋ってはいけないということだろう。
私は大人しくじっとすることにした。

ふと、芦川さんが私の首に包丁を近づけた。
これまでか。
そう思ったとき、一気に現実に戻されていく感覚がした。
目を開けると、そこにはいつもの風景が広がっていた。
夢だった?でも、さっきのことはしっかりと見に染み付いていた。
横になっていた体制から立ち上がる時足を見ると、何かの跡が付いていた。