近くの真山マンションの202号室に住んでいる芦川さんは、よくトラブルを起こすことで有名だ。
そして、皆まだ知らないことがある。
実は芦川さんは・・・。


目覚まし時計の音で目を覚ます。
今は5時半ごろ。
こんな早くに起きたのは他でもない、あの噂の芦川さんについて調べるためである。
すでに下調べはしたが、本格的な調査は今日が初めてだ。
ひとまず私は、芦川さんが住んでいるという真山マンションに行った。

いきなり芦川さんと話をするのには抵抗があるので、ここの大家、真山節子さんに話を聞くことにした。
「すみません、お時間よろしいですか」
「はい」
「芦川さんのことについて調べるために来ました」
すると真山さんは、芦川さんの詳細が書かれている資料のようなものを貸してくれた。

虚ろな目に、ぼさぼさの髪。
パサパサに乾いた唇に、お世辞にも綺麗とは言えない褐色の肌。
人生に疲れたような・・・そんな顔をした女の写真が貼られていた。
私の想像では、容姿が美しいお年を少し召された女性をイメージしていたので、はっきり言って驚いている。
その下には名前が書いていた。
芦川・・・さら、と読むのだろうか。
芦川沙羅と書いていた。年齢は28歳。
このような顔からは見えない年齢だ。
後は知っている情報ばかりだったので、適当に流し読みしていた。

まだ抵抗心は残っているが、勇気を振り絞って芦川さんの部屋に行くことにした。
「気をつけてね。芦川さんは心が繊細な方だからすぐお怒りになられるわ」
真島さんは私にアドバイスをくれた。
「ありがとうございます。気をつけます」
私は深く頭を下げ、202号室を目指した。

よく思えば、この調査は順調に進みすぎな気がする。
とは言っても、まだ分からないことはたくさんある。躓くことはあるだろう。

そして、202号室に着いた。恐る恐るインターホンを押す。