ふと、落とした視界を占めたのは、紫色の水溜まりだった。水の色が紫色な訳ではなくて、雨の中で、鮮やかに咲く、紫陽花だった。それが水溜まりに写っていた、ということ。 思わず立ち止まった私に気づき、彼も止まる。 「...どうしたの?」 そう言って、私の視線を辿ったのだろう彼は、"紫陽花だね"と微笑んだ。 「なんか、紫陽花って、良いよね」 なんて目を細める彼。 「私は.....きらい」 そう小さく呟けば、それでも彼には届いていたのか、少しだけ眉を寄せて、私を見ている。