いや、こんな達筆で、霊体に慣れとか言って、姿が見えない不審者なんて多分、一人しかいない。
なんで一人なんだ。

あいつを連れてくればいいじゃないか、昨日みたいに。


そう思いながらもずっと目の前に張り付けられた紙を目に、仕方なく霊体になるため刀を手にする。





「――――うわ、ちょっと離れてよ」



霊体になって目を開けた途端思いの外近くにあった信長の顔。
うっとおしくて払いのけ自分の身体から完全に抜け出した。



「本当は、お前ではなく、“はせちゃん”とやらの方がよかったのだが、あいつは俺の姿がまるっきり見えん。仕方なくお前のところに来たのだ」

「どうでもいいけど、なんの用?」

「今すぐ学校とやらへ行け」

「は?突然何。俺、一応謹慎中なんだけど」




いつも思ってたけど、この人ってほんといつだって突然で強情で、強引だ。
てか、なんで俺に・・・。



「すずが、あいつに捕まった」

「・・・は」

「あの、妖に繋がっておるかもしれん男だ。話をしに行くと行ったが、俺は中に入れなかった。中でなにが起きているかわからん。もしやすると・・・」




いつになくせっぱつまった様子の信長の声。
話をしにって、どうして。

あいつは危険な奴だ。
俺に殴られても、取り乱すことなくずっと冷静だった。