暗室というほどの閑静の部屋で、六畳はあるベッドに一人の女の子が、この騒ぎを知らず熟睡している。そこに四人ほどの忍びが音も無しに集まり、一人がゆっくりと布団を剥がしにかかる。


「汚す気か?」


手を止めて、四人は全員驚いたように振り返る。腰に装着した短刀を抜くものと、苦無を投げる構えに入っている者が声の主を捜す。だが、その主は夜目がいい彼等でも、見付けることは不可能に近かった。


「俺の姿が見えないようじゃあ、この世界で生きていけないぜ。

今ここで死ぬか、生き延びて力を付けるか…、どっちにするよ!」


高まる邪悪な気が、彼等に死の瞬間を見せ、恐怖に反応した身体は、窓から慌てて逃げていった。屋敷内に感じていたその他の気配も、彼等が逃げおおせると同時に、そこでいなくなったように消え去った。

明かりが照らし始めたのは、その後直ぐの事であったが、ここは寝室のためにこの闇の濃さは変わらず、しばらくの間、彼は女の子の傍に仕えていた。


「こんなに間近でみたのは久々だよな、ミル」