朝のご飯の支度が済むと、いつものように「いただきます」の声が外まで聞こえた。いつもより一人分多い食事が机に並べられてはいるが、そこには誰も座るべき少年はいない。


マキとリクは子供達に構っているため、少年を呼びに行くよう少女に頼むが、少女はあまり乗り気ではない。

御飯は小分けにして用意されていないため、少年を上手く呼んで来れなければ全部食べられてしまう。



「ちゃんと残しておくから。ユナお願い」


そういうと少女の皿に食事を盛れるだけ移し、「ほら」といって安心させた。



ベンチに行くと少年は上の空でぼーっと、流れる雲を眼で追い掛けていた。ユナはその間に顔を挟むと、軽い声で「御飯だよ」といった。


「悪いが…いらない」



優しくユナの頬に触れて、邪魔だったかのようにどけた。このまま空を見ていたかったらしい。


「今食べないと夜まで食べれないからね。お腹減っても知らないから」


べーっとして食堂に戻る。少年は手を空に重ね合わせると、じっと何かを堪えるように眠りについた。