この闇の中で俺は生きているのか。沢山の人を殺めてまで生き延びた俺が…。
殺めれば殺めるほど、はまっていく屍の沼。身動きが取れないよう絡み付く呪いの腕が、底無し沼へと誘う。逃れようがない。
ただ、その中で見えた雰囲気の違う手が差し出され、その手に俺は死に物狂いでにぎりしめた。
* * *
目を覚ましたのは闇の中にうっすらと光が差し込む空間の中。見知らぬ部屋は殺風景で、何一つ飾り気がない。硝子のドアは外から当たり前に中が覗けるため、盗賊などの恰好の的である。
月の光は雲に遮られたり、また照らし出したりと窓から差し込み、何故自分が生きているのだろうと、暗い眼差しで眺めていた。
静かに過ぎ去った時の中で、近くから聞こえる寝息に気付き、暗い部屋で周りを探った。
三人が二つの布団に身を寄せて眠り、寝癖は悪くなさそうだ。だが、真ん中で寝ている一人には布団が横の二人に剥ぎ取られている。暖かい季節になるとはいえ、夜の寒さには禁物だ。
立ち上がる少年は足枷に気付くと、重そうに足をずりながら自分にかかっていた布団を真ん中の子に掛けてあげて硝子ドアを少し開けて、そこに座った。
「戦争など…、知らない世界に生まれたかった」
死に物狂いで生きるために、戦場と呼ばれる舞台の中で人を殺し、感情などとうに捨てていた彼には、それが一番の望みである。いや、死んでいった中にもそう願った者達がいたであろう。
この足枷は、そういった者達を逃がさないためにも造られたものであり、この戦いが終わるまで逃げることは出来ないはずだった。
現実逃避…、それが今の彼にはあてはまる。武器を持たない以上、もう彼は兵ではない。戦う意志がもうないのだから…。
殺めれば殺めるほど、はまっていく屍の沼。身動きが取れないよう絡み付く呪いの腕が、底無し沼へと誘う。逃れようがない。
ただ、その中で見えた雰囲気の違う手が差し出され、その手に俺は死に物狂いでにぎりしめた。
* * *
目を覚ましたのは闇の中にうっすらと光が差し込む空間の中。見知らぬ部屋は殺風景で、何一つ飾り気がない。硝子のドアは外から当たり前に中が覗けるため、盗賊などの恰好の的である。
月の光は雲に遮られたり、また照らし出したりと窓から差し込み、何故自分が生きているのだろうと、暗い眼差しで眺めていた。
静かに過ぎ去った時の中で、近くから聞こえる寝息に気付き、暗い部屋で周りを探った。
三人が二つの布団に身を寄せて眠り、寝癖は悪くなさそうだ。だが、真ん中で寝ている一人には布団が横の二人に剥ぎ取られている。暖かい季節になるとはいえ、夜の寒さには禁物だ。
立ち上がる少年は足枷に気付くと、重そうに足をずりながら自分にかかっていた布団を真ん中の子に掛けてあげて硝子ドアを少し開けて、そこに座った。
「戦争など…、知らない世界に生まれたかった」
死に物狂いで生きるために、戦場と呼ばれる舞台の中で人を殺し、感情などとうに捨てていた彼には、それが一番の望みである。いや、死んでいった中にもそう願った者達がいたであろう。
この足枷は、そういった者達を逃がさないためにも造られたものであり、この戦いが終わるまで逃げることは出来ないはずだった。
現実逃避…、それが今の彼にはあてはまる。武器を持たない以上、もう彼は兵ではない。戦う意志がもうないのだから…。

