「こんなときになんてことだ…、このままでは会社を立ち直すことが…」


警備隊長が申し訳なく、この失態の取り戻しを図るべく、隊員達に居場所の捜索を急いでいる。

執事のグラウンはただじっと、言いたいことを抑えて立っている。

救世主が戻ってくる事を祈り、そして、―――


「他に何か、思うことはないのか?」


少し息を切らせながら、庭の窓に見える一人の影。太陽の光が弱まると見えたその姿は、幼少期には感じた闇を抱え、誰かは直ぐにわかり、怒りをあらわにした。


「きさまか!きさまが娘を連れ去ったのか!?」

「連れ去ったのなら、戻ってきたりはしない。だが、連れ去った奴からは連絡が入った。だから来たんだがな」

「どこだ!どこに娘はいるんだ!?」

「………」


フェイは黙ったまま空を見上げて、ぐっと拳を握ると庭に消えて、行ってしまった。執事のグラウンはふと軽く笑い、小声で「お願いします」と呟いた。

ミルの父は「くそ!」と机を叩いた後に警備隊長に後を追う指示を出し、自室に篭ってしまった。