―――黒狼のアジトに戻ってくると、迷惑をかけたと謝りに、長の所へ行った。

いつ来てもここは重苦しく、あまり入りたくはない部屋だが、こういう際は仕方ない。


「なんだ、もう戻って来たのか。もう少し遅くなると思ってたのに」

「用事は済ませた。これからはまた―――」

「済ませたなら…、こんな手紙は来ないと思うんだがな」


一つの手紙を顔の横にだし、ぱっと刹那に向かって投げ付けた。宛名は、フェイ。長とあの村の者しか知らないはずの昔の名。グラウンが諦め切れずに送った手紙だというのだろうか?


「悪いが、中身は読ませてもらった。

想い人に逢いたいなら、そういって出ていけばよかったものを…」

「そういうわけにはいかない。命の恩の方が重いからな」

「そうか…」



手紙を持ったまま、重苦しく部屋をでると、与えられた部屋に戻ると、その手紙を開き、中身を読む。


《お前の女は捕まえた。返してほしければ、我が元に来るんだな。

我の名は帝朧、忍びの一族の長である》


「……ミル、くそ!あの時の気配がそうだったのか…っ!」


急いでアジトを飛び出る刹那は、音速よりも早く駆ける。