私には咲弥(さや)という姉がいた。
6歳年上で、美人で勉強の出来る優秀な人だった。

同性で年も離れていたため、私たち姉妹は仲が良かった。

でも姉は6年前に亡くなった。
見つかったのは山奥の森林。
刃物で胸や腹など十数ヵ所を刺され、失血死だった。

当時姉は18歳。

犯人として逮捕されたのは姉の3歳年上の彼氏、榎田拓哉(えのきだたくや)21歳、当時大学3年生。

動機は、姉に別れを告げられたこと。

高校3年生だった姉は半年後に大学受験を控えていたため、勉強に集中したいと彼に別れを告げた。

別れを告げられたことに逆上した彼は、山の近くの公園に姉を呼び出し、ナイフで姉を殺害。

姉が遺体で発見されたのち、犯人としてあがった彼は数々の証拠により殺人罪で逮捕、起訴され懲役25年を言い渡される。
6年経った現在も服役中である。

私は自分の部屋を出ると、隣の部屋の前で立ち止まる。
"咲弥のへや"という、可愛く飾りつけしたネームプレートがぶらさげてある。

お姉ちゃん…

このネームプレートを見るのも"もう最後"。
あまり立ち止まっていたら心が揺らいでしまう。

私はしばらく見つめると部屋の前を通りすぎ、階段をおりていった。