パンプスとスニーカー

 「すみません」

 「転んじゃったの?」

 「もしかして、靴のせい?」




 姉弟の矢継ぎ早の質問に、ひまりが小さく首を横に振った。




 「えっとですね」

 「親切心が仇になっちゃたわね――この場合、ひまりさん自身にとって、ということになるけど」

 「「は?」」

 「いやぁ、単純に、あたしがドジっちゃったってだけなんで」




 テレテレ笑ってる顔は、屈託がない。


 なんのことやらわからなかったが、とりあえずは大怪我ではなかったようで良かったと武尊も安堵する。




 「歩けそう?」

 「平気平気!…あたたた」




 それでも派手に擦り剥いたので、けっこう痛いのだろう。




 「あんた、消毒液とガーゼ、それにテープ買ってきて」




 一佳が武尊に指示を出すのを聞いて、ひまりが慌てて立ち上がる。




 「大丈夫!家に帰って適当にバンソーコでも貼っておきますんでっ!」

 「家に帰って?」




 思わず、武尊が問い返す。




 「あ~、あるかなぁ」




 自分の家ならばともかく、たしか現在ひまりは他人の家に間借りしているはずだ。


 救急セットくらいある程度、どのうちでもありそうだが必ずというわけでもない。




 「今、村尾さんのところに泊まってるんだっけ?」

 「あ、いや、今夜は沢さんのところに泊めてもらうことになってるの。やっぱり連日になると悪いし…」

 「そっか、彼女、一人暮らしじゃなかったか、そういえば。それなら、一応、バンソーコくらいは買って帰った方がいいんじゃない?」

 「だね、そうしようかな。アテにするのも悪いし」




 ついその場で二人だけが知り得ている情報を話題にしてしまったが、横で聞いていた祖母と一佳が怪訝に顔を見合わせた。




 「今夜は沢さんの家?」