パンプスとスニーカー

 家庭の事情を話されたくない、そう言っていた武尊の意図的にはダメなのかもしれなかったが。




 「そういえばひまりさんは、ご実家が東北だということだったけれど、大学の寮に入ってるの?」




 話題の転換にホッと息をつく。




 「あ、…いえ、抽選に洩れてしまったので、アパートなんです」

 「あら…それは、よけいに大変よね?経済的にも」

 「ええ、値段的に大学の近くだと辛くて、ギリギリ通学圏内ではあるんですけど」




 それ以前に、そのアパートに戻れるかどうかさえ定かではない。


 戻れるにせよ、そのままで入れるとも思えなかったから、リフォームなどの期間を考えると頭が痛い。


 …火災保険が下りたら、引っ越すべきだよね。


 それはそれで、同等の条件を持つ場所などそうそう見つかるとも思えない。


 …敷金、礼金とか、うう~頭が痛い。


 どちらにせよ、今日明日の宿は確保できているのだ。


 その間になんとか、ある程度今後の指針なり計画なりを立てなければ。


 何気なく覗いた腕時計の時間は、そろそろ沢のバイトの終わる時間を指し示していた。


 …一度、沢さんに連絡しないと。


 いきなりアパートで待ち伏せというわけにもいくまい。


 明日の午前中には合鍵を作ってくれるというから、今日のようによけいな時間潰しをする必要もないだろう。


 とはいえ、


 …あ、でも、来週は沢さんのとこにもお世話になれないんだ。