パンプスとスニーカー

 「………そうですか」




 なんと言っていいかわからない。


 こうして家庭の事情に意図せずして踏み込んでしまう時、あらためて武尊が危惧していたことがよくわかる。


 …別にお母さんが亡くなってることとか秘密でもないんだろうけど、他人に知られて言いフラされたりしたら気分良くないよね。


 俯いた視線の先、武尊が買ってくれたパンプスがひどく重い気がした。


 なんとはなしに、ワンピースの裾を手持ち無沙汰に弄ぶ。




 「だから、心配しすぎだとわかっていても、ついあれこれ口を出さずにはいられないのね」




 声の調子が変わった気がして顔を上げると、武尊の祖母が優しくひまりを見つめ微笑んでいた。




 「少し安心したのよ」

 「え?」

 「ちゃんとあなたのような人に出会って、見極めることができるあの子に」

 「……おばあさま」




 胸がキリキリと痛む。


 武尊の祖母の信頼と好意に満ちた眼差しが辛い。


 悪いことをしているつもりではなかったけれど、自分はこの人を騙しているのだ。


 武尊の恋人という呼称は、本当のことではなかった。


 たとえそこに悪意はないにしても、こうして嘘をつき続けることはひどい罪なことではないのだろうか。


 …どうしよう。あたし、安易に人助けだなんて、嘘をつくことに同意しちゃったけど。