パンプスとスニーカー

 長年の経験というか姉の表情から、あまり嬉しくない状況を悟って、武尊が内心で顔を顰める。




 「なによ、そんな顔して」

 「そんな顔って、どんな顔だよ」

 「顔に出てないつもりかもしれないけど、お姉さまを舐めるんじゃないわよ」




 それはお互い様のことで、それだけに厄介ではある。


 しかし、そうは言っても武尊もいつまでたっても幼い子供ではないのだ。


 シラッと空惚けて、知らぬふりを続けた。




 「わざわざ俺を待ち伏せして、因縁付け?」

 「な~んか、怪しいのよねぇ」




 ギクッ。


 それでもまだ確信には至ってないのか、一佳もイマイチ煮え切らない。


 …やべぇな、やっぱあんま長くはもたねぇか。


 どちらにせよ、永遠に使えるいいわけだと思っているわけではなく、父の病院の医師の奥方との不倫騒ぎのほとぼりが冷めれば…という目算ではあった。


 …それでもまあ、半年くらいはなんとか言い訳できっか。


 そのあとは、性格の不一致とかなんとか、結局友達に戻ろうということで、ひまりとは話がついて別れたことにするしかないだろう。


 祖母の落胆を思うと心が痛む。


 しかし、一度まとも?な相手を紹介して、それなりに大人しくしていれば、残り2年弱の学生生活の間だけ息を潜めていればいい。


 その後は自活することにもなるし、金銭的なものをチラつかせての無理強いは、いくら兄たちでもできなくなる。


 それこそ『来年のことを言えば鬼が笑う』ではないが、先々のことなど前もってあれこれ言っていても仕方がないことだ。




 「何が怪しいんだよ?」

 「あの写真」