パンプスとスニーカー

 「た?」




 迷ったようだが、やや引き攣り気味にひまりが武尊へと呼びかけた。




 「た、タケちゃん?」

 「「「………」」」




 …タケちゃん。


 いや、別におかしくはない。


 タケル…なのだから、『タケちゃん』の何が変だというのか。


 が、微妙に空気がひび割れた気がした。


 ピシッ!




 「ぷっ、タケちゃんっ!?」

 「ふふふふふ」




 一佳が吹き出し、祖母も小さく笑う。


 顔の片側を抑えて瞑目する武尊に、焦ったようなひまりが伺いを立ててくる。 




 「あ、あの」

 「いいよ、別に何もおかしいことないから」

 「う、うん」




 ただ…そう。


 ただ、いかにもスタイリッシュで気取った武尊のあだ名としては、かなり純朴すぎる、それだけのこと。


 …タケちゃんって、いったいいつの時代の小学生の呼び名だよ。


 失礼極まりない感想を心で呟く。




 「で、あんたの方は?」

 「は?」




 お鉢が武尊に回ってきた。




 「武藤さんのことよ」




 しかし、そこで武尊が固まる。


 …名前、名前、名前ッ!?


 なんといまさらなことだったが、ひまりの下の名前を武尊は憶えていなかった。