パンプスとスニーカー

 「そうなの」

 「偉いわぁ」




 しかも世間一般でいう奥様連とは異なる価値観を持つ祖母にとっては、理想の『お嫁さん像』。


 …まずいかも。


 ひまりが特待生だということは知っていたし、苦学生だということもある程度は聞き及んでいたが、よもや自ら弁護士を目指すために家を出てきたほどの苦労人だとは知らなかった武尊だ。


 浪花節や努力・勤勉が大好きな祖母と姉の目に生まれたひまりへの敬意に、危機感を覚える。


 …これで実は本物のカノジョなんかじゃなくって、武藤さんの弱みとお人好しにつけこんだ偽装だってバレたら、すげぇやばいんじゃねぇの?

 
 期待が高まれば高まるほどに、失望が怒りとなってはね返ってくる未来が容易に予想できる。




 「でも、お父様はきっと武藤さんを大切に育てられたのね」

 「え?」

 「初対面のご挨拶もとても気持ちのいい礼儀正しいご挨拶だったし、食べ方も綺麗ですごく好感が持てるわ。大切に厳しく育てたお嬢さんだからこそ心配されたのよ。大変な道を志して苦労させたくなかったのね、きっと」




 ひまりが祖母のその言葉に目を瞬かせて、複雑な笑みを浮かべ俯いた。