パンプスとスニーカー

 実際に、付き合ってる彼女があまりに非常識な女では、なおさら武尊への家族の心象は悪くなってしまうだろう。


 本末転倒―――。


 …それじゃあ、お見合いしたくないっていう、北条君の主張そのものが通らなくなっちゃうよね。


 どうやら、ここは武尊の主張に理があるようだ。




 「はぁ~っ、わかった。乗りかかった船だものね」




 あるいは毒食らわば皿までか。


 ゲッソリと額を片手で押さえて、ひまりが項垂れる。




 「まあ、俺から物を受け取るのがイヤだっていうなら、用がなくなったらそのまま質屋にでも持って行ってもらっても構わないし」

 「…いや、さすがにそれは、ね」




 よけいに気が咎める。




 「あるいは返却してくれてもいいし、そんなに難しく考えないで、制服だと思ってくれればいいさ」

 「…制服ね」




 ひまりに合わせて買った衣類など、返却されても武尊も困るだろうが、それが一番無難な気がする。


 あとはどうするかは武尊の問題だ。




 「納得してくれたみたいだし、じゃあ、次は美容院………付き合ってくれるかな?」

 「了解…です」




 あとは野となれ、山となれ。


 協力すると約束した以上、とりあえずは、武尊の言うがままに従うしかなさそうだった。




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