パンプスとスニーカー

 …あたし、こんなことで将来大丈夫だろうか。


 鏡の中の、自分とは思えない女の子の額に額をくっつけ、項垂れる。


 結局いつの間にか丸め込まれて、武尊の言い分を全面的にに受け入れることになってしまっていた。




 「どう?着替えられた?」

 「……まあ」




 扉の向こうからかけられる声に、試着室を出る。




 「いいじゃん。凄い似合ってる。可愛いよ」




 ふんわりとしたデザインの、シフォンドレス。


 胸のすぐ下の位置を大ぶりなリボンで絞ったそのドレスは、露出も少なく清楚なひまりによく似合って、彼女のフェミニンな魅力を引き立て、武尊の言うとおりよく似合っていた。


 にっこり笑ってくれる顔は本当にそう思ってるようで、普段言われなない褒め言葉に、ひまりもまんざらではない。


 カアッと顔に血が昇って、赤くなっているのを自覚する。


 …しかも、こんなイケメンに言われちゃったりしたわけだし。


 お世辞だとわかっていても、嬉しい気持ちは抑えられない。




 「あ、あたし、こういうファッションって、初めて…。色とかも」




 これまでのひまりは実用一辺倒、可愛い服やおしゃれに興味がないわけではなかったけれど、勉強や家のこと、もっと他に気にすることがありすぎて、どうしても女の子らしい楽しみや興味は後回しになってしまっていた。




 「へぇ?似合うのに、もったいない」




 手を差し伸べられて、近くにあった椅子へと導かれる。


 …なんだか王子様にエスコートされるお姫様みたい。


 なんて乙女チックなことが思い浮かんで、密かに動揺してしまう。


 …あ、あたし頭になんか沸いてるかも。


 しかし、こんなシチュエーションでトキメかない女の子なんているのだろうか。




 「今度は、これ、履いてみて?」