パンプスとスニーカー

 「払いは気にしなくていいよ。俺が奢るって言っただろ?」

 「え、でも…」

 「いいから、武藤さん、今大変なんだろ?」

 「ええっ、どうして…」




 武尊の匂わせた言葉の意味を問い返そうとして、だがウェイトレスの目が気になって聞けない。


 それに、人前であまりお金のことで揉めたくもなかった。

 
 とりあえず友達になろうという話なのだから、落ち着いてから返せばいいかと自分を納得させ、素直に応じる。


 それでも、これも借金の類かと、生真面目なひまりには罪悪感を感じずにはいられなかったけれど。




 「じゃあ…ありがとう、ご馳走になります」

 「うん、どういたしまして。で、注文は?」

 「えっと、アイスティで」

 「俺は、今度はブルマンにしようかな」

 「かしこまりました」




 注文を受け、ウェイトレスが去りぎわ、チラッと武尊の顔を見て顔を赤らめたのに、ひまりも気がついて、つい
ひまりも武尊の顔を見てしまう。




 「どうしたの?」

 「いや、本当にもてるんだな、って思って」

 「は?」

 「今の子も、北条君の顔を見てうっとりしてたから」