パンプスとスニーカー

 「わかってるわよ」




 そんなものよりよほど価値がある言葉だし、破壊力がある。




 「だからさ、俺に協力して欲しいわけ。俺の恋人のフリしてもらって、俺には好きな人がいるから見合いはできない…そういうふうに持ち込みたいんだ」

 「…うーん」




 事情はわかった。


 しかし、




 「そこはわからないかも。今好きな人がいないなら、とりあえずご家族の顔を立てて、会うだけ会う…お見合いしてみるってわけにはいかないの?」




 どうしても相性があわないようなら断ればいいだけの話ではないだろうか。




 「まだ20才そこそこなんだから、お見合いって言っても、今すぐ結婚とかそこまでの話じゃないんだと思うんだけど?」




 またも溜息。




 「まあね、今すぐ結婚ってわけじゃないのは確かだろうけどさ。相手もまだ大学に入ったばかりだし、結婚となったら、俺や相手が大学を卒業して、その後…ってことになるとは思う」

 「なら…」

 「けど、一度見合いをしたら、そうそう断ることなんてできない」