パンプスとスニーカー

 柔らかく微笑む顔が綺麗だ。


 もともとハンサムな男だとは思っていたけれど、ひまりは彼に魅力を感じたことはなかったはずなのに、そうして優しく微笑む顔は本当に魅力的だと彼女でも思う。


 もちろん異性として意識するという意味ではなかったけれど。


 …けっこうイイ顔できるんだぁ。




 「武藤さんは、俺と君のことを知人レベル以下って言ってたけど、同じ教室で1年も勉強してればどういう人かくらいだいたいわかるよ。武藤さんが誠実で裏表のない人だっていうのはさ。そうでなくても俺のダチの壮太とか、その壮太の幼馴染みの村尾さんからとか、たまに武藤さんのことは聞いてたしね」

 「…………」

 「…………」

 「…………」

 「……?武藤さん?」




 あまりに反応がないので、目を開けたまま寝ているのかと、武尊が怪訝にひまりに声をかける。


 その声で我に返ったらしいひまりが、ハッとしていきなり顔を片手で抑えて俯いた。




 「なに照れてるわけ?」

 「いや、そんなこと言われたの初めてだから」




 臆面もない褒め言葉は、照れるものだ。


 歯の浮くようなお世辞だと話半分に聞くこともできたけれど、なぜかひまりはこの武尊の最上級の評価を本心からだと信じた。


 そしてそんなひまりの心情を察したらしい武尊が、ニヤニヤと揶揄する顔で覗き込んでくる。




 「俺、恋の告白したわけじゃないんだけど?」