パンプスとスニーカー

 はあ~と、演技ではない溜息がつい溢れてしまう。


 あまり武尊に似合っている仕草ではないが、ガリガリと頭をかいて、本当にマイッたというように額を片手で抑えて項垂れている。


 それだけ、困っているということだろう。




 「お見合いって、武藤君もまだ20才だよね?」

 「俺、3月が誕生日だからまだ19才」

 「え?そうなんだ」

 「まあ、もうすぐ20才だから、あんまかわんないけど」

 「そうだね」




 4月が誕生日のひまりより、ほぼ丸一才年下ということか。




 「まだ19才なのに、お見合いさせられちゃうわけ?」

 「だから、したくないんだって」




 それだけでもう事情の半分は察せられたようなものだが、




 「したくないんだったらしなければいいとか、そういうことはまあ、できないからあたしに恋人役をしてくれって頼んできてるんだろうけど、北条君ってカノジョいるよね?」




 今はどんな彼女と付き合っているのかまでは知らなかったが、学内にも何人かそれらしいと噂になった女の子はいたはずだったし、おそらく噂だけでもないはずだ。




 …そのカノジョをちゃんと紹介すればいいのに。