パンプスとスニーカー

 純粋な好奇心だ。


 このいかにもチャラくて、女に対しては不誠実そうな男にそんな感傷があるのかと。




 「あるんじゃないかな。つーか、わざわざ捨てるのも面倒だからどっかに放り込んであるのかもしれないけど、少なくても目に付かなきゃ放置してるから」

 「………」




 やっぱり人でなしかも知れない。


 なんだか、武尊のスタンスは、過去を拭い去りたい女たちの行動よりもさらに冷淡な気がする。




 「第一、俺、女に執着したことないしさ」

 「そ、そうなんだ」

 「来るものは拒まずだけど、去るものは追わないってやつ?」




 悪びれもしない。




 「でも、なんか武藤さんとか誤解してるみたいだけど、俺、被ったことはないとは言わないけど、あえて二股したことねぇし、遊べないような女相手に自分から声かけたことないよ?」

 「…なるほど」




 たしかにいかにもナンパそうな見かけの男で、武尊にはいつも隣に女を侍らせているイメージがあるが、むしろ誰彼なく女の子とみれば声をかけているのは壮太の方で、派手な女性関係からチャラけているイメージはあるが、複数の女を同時に連れ歩いているわけでもなかった気がする。


 壮太の方でも声をかけるとは言っても、愛想がいいだけのこと。


 彼らの恋愛対象とはあきらかにタイプの違うひまりにさえも、親しく声をかけてくるくらいなのだ。


 そこに一々邪な意味合いはないのだろう。


 武尊が腕時計を確認して、顔を顰めた。




 「やば、話戻していい?けっこう時間たっちゃったし」