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 「まあ。あ、でも別に答えなくていいから」

 「なんで?武藤さんが新しいカノジョになるっていうならともかく、友達なんだから聞かれても別にかまわないけど?」

 「そ、そういうもの?」




 ひまり的には微妙だ。


 もちろん、女友達との間で付き合っている彼氏のことは話題になることはあったけれど、別れた相手のことになるとかなり話題には乗せづらい。


 ひまりには男友達もそれなりにいたが、彼らの女性関係を彼女は特に詮索したことはなかった。




 「男にとって過去の女って、結局は勲章みたいなところがあるしさ」

 「ええ?」




 衝撃的だ。


 考えてみれば、男友達とはあくまでもフツーの雑談をする付き合いで、男女の交際や恋愛観についてなど話したことがなかった。


 両手を組んで背凭れてに寄りかかって首を捻る武尊は、けっこう真面目にひまりへの返答の内容を考えているらしい。




 「俺も女友達っていうのはいなかったけど、まあ、それなりに女とは交際したことがあるわけ」

 「らしいね」

 「だからわかるんだけどさ、女とはそこんとこ違うんだよな。男は思い出を大事にするけど、女は捨てたがる」 
 「うーん」




 男女交際の経験がないひまりにはわからない。


 が、自分がもし誰かと付き合った経験があったとして、過去の彼氏のことはどういう経緯で別れることになったとしても、思い出したり、ましてやあまり他人に話したいことではないだろうことは容易に想像できた。




 「女は男と別れると過去の記憶を消すていうか、なかったものにしたいんだろうな。もらった物はさっさと捨てるし、写真なんて間違っても残さないものだけど、男は逆だな」

 「えっと、北条君も持ってたりするの?その…昔の彼女がくれたものとか写真?」