これまでひまりは、武尊にとって個人的接触がないという以上に、まったく興味もなかった存在だった。


 興味さえ沸けば、別に臆面もない性格だ。


 機会がなくても自分で機会を作るだけの甲斐性を持っている。


 そしてたいていの女は、武尊のようなスペックを持った男に声をかけられるのを忌避することがない。


 実際に、胡散臭くは思っていたようだが、目の前の女も時々武尊に見蕩れているようなのには気がついていた。


 もちろんそれで惚れられているとか、好意を寄せられているとか勘違いするほど単純でもなかったけれど、基本魅力的な異性を意識しない人間はいないのだからそれも当然のことだろう。


 ひまりのことは、友人知人の評価や一見して見た自分の印象から、他人の弱みを掴んでどうこうするような女ではないと判断していた。


 だからこのド真面目で裏表のなさそうなこの女なら、ある程度事情を知られることになってもその事情を吹聴して楽しんだり脅迫してくるようなこともしないだろう、その程度の信頼から利用することを思いついたにすぎなかったのだ。


 おりしも、ひまり自身も逼迫した事情があるようだったこともある。


 武尊にとって、互いに渡りに船だろうくらいな認識。


 が…、




 「悪くないな」

 「…は?」

 「俺、賢い女って嫌いじゃないから」




 また、いきなり何を言い出すのかと、ひまりの眉根が不審に歪む。


 しかし、そんなひまりの不信感にも怯むことなく、武尊が微笑んだ。


 さっきまでのいかにもひまりの好感を得ようとする、妙に嘘臭い王子様スマイルではなく、本当にどこか楽しそうな顔。




 「とりあえず、俺と友達になろうぜ?」

 「へ?」




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