「…いるか、今時、そんな女っ」




 完全に遊ばれている。




 「ま、諦めてどっかのお嬢さん、嫁にもらって落ち着いた生活ってやつに励むんだな」

 「くそぉっ」

 「おう」




 悪態をつく武尊を放置して、壮太が横合いの教室から出てきた美紀に声をかけた。




 「あれ、相変わらずツルでるわねぇ」

 「おトモダチですから」




 フザけて戯る壮太の言葉に美紀だけでなく、出てきた女友達二人もクスクスと笑った。




 「壮太たちは、今日、もう終わり?」

 「ああ。お前も帰るつもりなら、送ってってやろうか?」

 「どうせ、女と約束してるんじゃないの?」

 「してたら、誘うか」

 「それはそうか、ありがと。でも、今日は大学の近くで、弘昌さんと待ち合わせしてるからさ」

 「…そうか」




 壮太は特に残念そうでもなく表情も変えてはいなかったが、さんざん弄られた武尊の方は、内心フられてざまあみろと思う。




 「また、よろしくね」

 「都合がいいヤツ」

 「美味しいコーヒー、また奢るから」

 「しょうがねぇな」

 「じゃあ」

 「ああ、またな」




 手を振り合って、壮太と美紀が別れる。


 会釈して真ん前を通り過ぎる美紀と美紀の友人たちを、武尊もなんとはなしに見送って、そのうちの一人、ガリ勉女の後ろ姿を気が付けば目で追っていた。