パンプスとスニーカー

 二人で六本木ヒルズデートをした後も、遠出はそうそうできなかったが、大学の行き帰りに、あるいは授業の合間にと、マンションで顔を合わせる他にも、細々とデートを重ね順調な付き合いを続けていた。


 が、…なぜかそうした雰囲気になかなかなれない。


 いや、たぶんまったくそうした雰囲気がないわけではなかったし、お互いに好き合ってるのは明らかだ。


 が―――、


 …すげぇ気負ってて、ガチガチなんだよな。


 そうした時にこそ、ドンファン…いやもとい、それなりに経験のある武尊がひまりの気持ちを和らげてやるのが本当なのだろうが、なぜか上手く行った時に限って邪魔が入る。

 …なんでなんだよ。


 よもやと思うが、マンション内に監視カメラでもしかけられていて、密かに祖母や姉あたりに見張られているのではと被害妄想に駆られることさえあった。


 つい先日も一佳の急襲があったばかりだというのに、この長姉に比べれば弟離れしているはずの二番目の姉までもがなぜか急に現れ、立派なお邪魔虫に。


 家族に珍しく彼女を気に入ってもらえたのはありがたいことなのだが…。




 「…酒でも飲みに行くか」

 「え?あたし、バイトだから無理だよ?武尊も夜、飲み会に行くんでしょ?」




 つい口から滑っていた内心をひまりに聞き咎められ、曖昧に笑って誤魔化す。




 「ははは…そうなんだけどさ。ひまも後で合流する?」

 「え~、無理。あたしも、レポートが溜まってるし、ここのところ出かけてばかりであんまり勉強できなかったから、家で頑張りたいの」

 「そうだよね」




 六本木デートの直後は、ひまりもずいぶん思い切っていたと思うが、よくよく思い起こしてみれば、その少し前、レストランのディナーでワインをけっこう飲ませた憶えがあった。


 …酒か。




 「ハァ…」 

 「なに?レポートあんまり進まなかったの?」

 「ん、そうでもないんだけどね」




 さすがに、本命の彼女を酒に酔わせてどうこうするというわけにもいかないだろう。




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