ぴ~んぽ~ん。




 「………」

 「………」




 今度はインターフォンだ。


 しかし、今度も武尊が無視を決め込んで…そのまま、ひまりの無防備なうなじに顔を埋めようとして…。


 ぴ~んぽ~ん、ぴんぽ~ん、ぴんぽ~ん、ぴんぽん、ぴんぽんぴんぽんぴんぽん、ぴぼ―――ッ!!




 「た、武尊っ」

 「ハァ……この夜中に、いったい誰だよ」




***




 「もうっ!いつまでお姉様を玄関先で待たせておくのよっ」




 あまりに執拗に鳴らされ続けるインターフォンの音に根負けして、武尊が渋々応答すれば…どこの押し売りかと思った相手は、見慣れた彼自身のお姉様。


 すっかり出来上がっているらしく、真っ赤な顔でガハガハ笑ってどこぞのオヤジよろしくへべれけ状態。


 大学時代の友人たちとの飲み会とやらでこっちまで出てきたそうが、飲みすぎたあげくに終電を逃したとか。


 それで近くに住む弟のマンションへと転がり込んできたのはいいのだが。


 …よりによって、このタイミングかよ。




 「すみません、ここまで飲ませるつもりはなかったんですが」




 医大時代の先輩だという、一佳よりは2,3才年上だろう青年医師が苦笑しつつ、肩に担いでいた一佳を居間のソファへと丁重に下ろしてくれる。




 「…いえ、こちらこそお手数おかけして」




 先程までひまりを押し倒していたソファに大の字になっている姉を、その当のひまりがあれこれ世話を焼いてくれていた。