パンプスとスニーカー

 思わず飛び上がって、目を見開いたひまりのあからさまな態度に、ぷっと武尊が吹き出した。




 「冗談だよ」

 「…か、からかわないでよぉ」




 くくく、と笑いながらも、「ごめん、ごめん」と頷いて、それ以上は特に弄らないでくれる。




 「でも、半分は本気かな」

 「…………」

 「ま、でも今はそういうことはともかくとしてさ、とりあえず、ランチを食べに行こ?」

 「うん」

 「軽くパスタでも、と思ってるんだけど、ひまは何か食べたいものある?」

 「ううん、パスタがいい!」




 ちまたの女子の例に洩れず、ひまりもパスタの類が大好きだから、むしろ大歓迎だ。


 肩に置かれた手に照れながら、けれど今度は気後れすることなく、素直に身を任せて促されるままに歩き出す。


 …ホテルの駐車場だなんて、駐車料金とかきっと高いよね。そういうの気にしないで停めちゃうのって、やっぱり武尊ってお坊ちゃまなんだなぁ。


 そんなささやか互いのギャップを、考えるともなく考える。




 「ランチを食べた後、映画を見て、少しだけヒルズ名物の庭園を散歩してから、オススメのカフェでお茶しようと思ってるんだけどいいかな?」




 サプライズのデートも楽しそうだが、あらかじめ予定を教えてくれるのが嬉しい。

 
 しかも、意向もちゃんと尋ねてくれる。


 …男の子って、ここまでいろいろ考えてきてくれるものなの?


 女の子同士のお出かけとはまるで違う初めての感慨。


 あまり歩かせないと言ったとおり、ヒルズ内だけで楽しめるプランのようだが、初めて訪れた六本木だ。


 あまりにいろいろ連れ回されるよりも、武尊のプランはゆっくり周囲を見て堪能したいひまりの今の気持ちにピッタリだ。


 今のところお茶までの予定しか聞いてないが、この様子では帰るまでのプランも立ててくれていそうだった。




 「あたし、ここは初めてだから、武尊に任せるよ」

 「うん。ひまもバッチリ靴ズレ対策してきてくれてるみたいだけど、もし足が痛くなったりキツいようだったら、遠慮しないで言って?」