パンプスとスニーカー

 「ん、グランドハイアットの駐車場。ヒルズの方の駐車場に停めようか迷ったけど、こっちの方が何かとアクセスも楽だし、こっちに停めたんだ」

 「…へぇ?」




 微妙な顔でホテルの外壁を眺めるひまりの顔に、




 「あ、別に今日、ここには泊まらないよ?」

 「え?あ…そ、そう、なんだぁ」




 あきらかにホッとした顔をしている彼女の様子に、武尊がクツクツと笑い出す。




 「ぷっ、カレカノになって初めてのお出かけデートで、いきなりガッツいたりしないって」

 「ははははは、はははのは…」




 乾いた笑いしか出ない。


 ひまりにしても、カマトトぶるつもりはなかったし、中高生の交際でもあるまいに、この歳でそうしたことに対して過剰に忌避するつもりもなかった。


 …でもなぁ。


 でもなぁ、まさにそんな感じ。




 「それに、ひまに迫るつもりなら、とっくに一緒に暮らしてるんだもん。今までもこれからも、どうとでもアクションとれるだろ?」




 だろ?と、同意を求められてもなんと答えて良いものやら。




 「ひまとはゆっくり付き合いたいと思ってる」

 「…………」




 まるでひまりの懸念も小さな不安も見透かしたようなセリフに武尊を見上げれば、目が合った彼は小さく笑って視線を反らす。


 …武尊、もしかして、照れてる?


 わずかに染まっているように見える頬の赤味は、そうであって欲しいと思っているひまりの願望なのだろうか。


 …違うよね?




 「ひまが、俺とそういうことしたいって思えるまで、ちゃんと待つから」

 「……うん」




 熱く火照ってしまった頬を片手で意味もなく撫で、俯いてしまいそうになる顔を必死で上げて小さく頷く。


 あらためてそんなふうに宣言されてしまうと、かえって身悶えしてしまうほどに気恥ずかしい。


 …ひ~。




 「もちろん、ひまがぜひともここに泊まって、俺と新しい関係になりたいっていうのなら、ご期待に添うのもやぶさかじゃないけどさ?」

 「ええっ!」