パンプスとスニーカー

 車に乗って目的地に着く頃には、武尊の気分も完全に切り替えられたらしい。


 そうでなくても、不機嫌さや憤懣をあからさまに表に出す方ではなかったから、むしろ彼女に気持ちを悟られてしまったことにバツの悪さを感じていることがわかって、ひまりもそれ以上、その話題にこだわることはやめていた。




 「ひま、東京来て、あんまり遊び歩いたりしたことなかったって言ってたから、表参道にするか迷ったけど、こっちにしたよ?」

 「ここって」

 「六本木ヒルズ。知ってる?」

 「へぇ~、ここがそうなんだぁ。テレビとか雑誌では見たことあるよ」




 巨大な地下駐車場から外に出てみれば、見上げるばかりのビル群。


 もちろん、ここに到着するまで物珍しく車窓からキョロキョロと周囲を見回してはいたけれど、いざ目の前に乱立するビルを目の当たりにするのとではまるで迫力が違う。


 …うっは、ザ、東京って感じ。


 ひまりの実家とて、それほど凄いド田舎というほどではないが、むしろ東京に出てきて、実家の周辺とそうそう変わらぬ田園風景に拍子抜けしたものだ。


 そのあとも、何回かは渋谷や新宿には足を伸ばしたこともないことはなかった。


 しかし、馴染むほどには遊び歩く時間も懐具合も余裕がなかったし、実際、東京だなんだと浮かれて遊び歩くどころではなかったのだ。




 「え?…ここって、もしかして、ホテル?」