パンプスとスニーカー

 「あ…う~」
 
 「ぷっ、う~ってなに?」




 …なんか、やっぱり凄く恥ずかしいかも。


 口元を手で抑えて、真っ赤になっているひまりをそれ以上追求することもなく、武尊がパンプスへと意識を移す。




 「一姉たちと会う時に買ったヤツだよね?」
 「うん…他に、オシャレな靴とか持ってなくって、武尊に貰ったのを履いてくるのってどうなのかな、って思ったけど」

 「嬉しいよ、すごく似合ってる」




 ニッコリ笑ってくれる表情は、言葉のとおりに嬉しそうだ。




 「でも、この間もちょっと靴ズレしてただろ?」




 むしろ派手に転倒した時の擦り傷の方がひどかったが、やはり履きなれていない靴に、靴ズレしていたことを武尊は憶えていてくれたらしい。




 「足、見てあげるよ。そのへんのベンチ…」




 キョロキョロと周囲を見回し、見つけたベンチへと手を引き連れていかれかけて慌てて遮る。




 「へ、平気」 

 「ん?無理しない方がいいって。ほとんど車で移動するけど、それでもそれなりに歩いたりもする予定だしさ?」

 「えっとぉ、実は…」




 校門に間近、チラホラと人影も見え始めている。


 わずかに躊躇しつつ――、


 …ちょっと恥ずかしいけど、ええい、ままよ。


 その場に立ち止まって、パンプスから片足を抜いて見せる。




 「あれ?…対策してきたんだ?」




 パンプスの下、ギリギリ革から見えない範囲の長さのショート靴下をストッキングの上に重ね履きしていた。




 「むらちゃんに、こういうのを履く時には踵とかにあらかじめバンソーコを貼っておいた方がいいよ、ってアドバイスしてもらってたから、こっちもホラ?」




 繋いでいない方の手で、片足立ちになったまま、脱いだパンプスを手に取り、踵のあたりを武尊へと見せる。




 「へぇ、ナイスじゃん」

 「でしょ?」




 ふふふと笑い合い、わずかな振動にフラついたところを支えてもらって、顔を赤らめつつも、ありがとうと礼を言って靴を履き直す。




 「備えも万全だし、じゃ、お楽しみに出かけますか」

 「うん」




 小さく笑んだ武尊はもういつもの彼で、その声音の柔らかさに勇気を得て、先ほど不審に思ったことを尋ねてみる。




 「えっとね、もしかしてなんだけど…さっき、武尊、不機嫌だった?」