パンプスとスニーカー

 慌てて横に避けようとして、たたらを踏んだひまりの肩を掴んで支えてくれた大きな手の主の呼びかけに驚いて顔をあげれば、探していた当の武尊本人だ。




 「た、武尊?」

 「うん?どこ行くの?」 

 「え?」




 武尊の背後を透かし見るようにして周囲を伺うが、とりあえず松田の姿は見えない。




 「えっとぉ」

 「もう出かけられる?」

 「え?あ…う、うん」




 戸惑っているひまりをよそに、武尊が彼女の背を押しクルリと方向転換させ、自然な流れでそのまま肩を抱かれてしまった。


 幸いまだ肌寒い季節。


 寒空の下、わざわざ屋外にいたい人間もそうそういなかったから他に人影はない。


 だが、ひまり的にはこうした公共の場…しかも、友人知人も多い大学校内で、ひと目も憚らず異性と肩を組んだり手を繋いだりというのは、かなりハードルが高かった。




 「あ、あのね」




 さり気なく身を離そうとして、「ん?」と逆に肩を抱く手に力がこもって引き寄せられ、間近で顔を覗き込まれてしまった。




 …ひ、ひぃっ。近いっ。




 目が悪いわけでもないのに、この超至近距離は心臓に悪すぎる。




 「どうしたの?」