パンプスとスニーカー

 「ハァハァハァハァハァ…」




 切れる息に閉口しながら右左。


 一緒に走っていたはずの美紀はとっくの昔に脱落してしまい、ひまり一人だ。


 …まさか、殴り合いなんて。 


 武尊にしても松田にしてもそんなことをするキャラじゃないし、第一その原因がひまりだなんてあり得無さ過ぎて疑うのもおこがましいが、妙に迫真に迫った美紀の物言いと、校舎の壁に視界を遮られる寸前に目にした光景に慌てふためいてしまっていた。


 遠目で見間違えかもしれなかったけれど、松田が殴りかかっているようにも見えたのだ。


 その後、なにがどうなったのか、武尊の方は無事なようだったが、いかにも不穏当な状況に陥っているのが目に入って、ひまりは焦っていた。


 美紀などは、さすがに法学生が大学構内で乱闘事件や刺傷事件なんてシャレにならないから大丈夫だと、一転意見を翻していたが、人間頭に血が昇ると何をしでかすかわからないのは、どんな立場の人間であろうと同じことなのは誰にだってわかる話だ。


 …さっきのところって、たしか。


 見当をつけたあたりの角を曲がりかけて、危うく対面側からやってきた人間に正面衝突しかけてしまう。




 「きゃっ」

 「…おっと、て、ひま?」