パンプスとスニーカー

 「……ハァ~、誰が逃げるんだよ」




 足早に歩み寄ってくる松田の顔に、うんざりとしつつ、それでも逃げるのか、と言われてしまえばそのまま知らん顔をしてゆくわけにもいかない。


 …つーか、別にこいつに何思われてもいいんだけどな。


 しかし、間違いなくひまりを間に挟んでのライバルで、今現在、一応は彼女とカレカノの関係になったのは武尊の方だったが、この目の前の男もひまりの‘友人’という地位をキープし続けている。


 どの程度の付き合いなのかは知らないが、思い起こせば一年生の頃にはすでにひまりの近くで見かけていた気がする。


 当時、ひまり自体に興味がなかったのでしっかとは記憶していない。


 しかし、むしろ松田自身、武尊や壮太とは真逆の意味で目立つ男だった。


 絶対に同じグループに属することはなくても、互いに意識し合うという意味では無視しえない相手。




 「ちょっと話がある。顔貸せよ」 




 喧嘩越しとまでは言わないが、いかにも穏やかざる顔つきの相手の話とやらの見当がつく。




 「…俺にはないんだけど」

 「武藤のことだ」




 …わかってるよ。


 ハァ、とまたもため息をつきかけ、仕方なしに最初に向かいかけたベンチヘと向かう。

 ドサッと腰掛け、顎をしゃくって話を促す。




 「このあと、俺、デートの約束があるから忙しい。話あるなら、さっさと話せよ」