パンプスとスニーカー

 カフェへの道を進みかけて、遠目に見慣れた女が見知らぬ男の腕にぶら下がっていちゃつきながら歩いているのを遠目に見つけ、武尊は立ち止まって小さく吐息を吐く。


 …は。


 ひまりが講義を受けている間に、彼女にいちゃもんをつけたという高崎恵梨香と話をつけようと、早めに大学へやってきたのはいいが、どうやら一歩遅かったらしい。


 ハッキリひまり本人に聞いたわけではなかったが、どういう気まぐれだか、武尊の恋路に横槍を入れようとした当の恵梨香の方は、さっさと前の彼氏の後釜を見つけてよろしくやっているようだ。


 …まったく、アホらしい。


 どういう言い方をしたのか知らないが、女王様気取りの牝猫どのが危うく引き起こしかけた波乱の幕間は、あっけなく閉じてくれそうな塩梅だ。


 壮太が言っていたように、おそらく恵梨香にしても本気でひまりを牽制しようとしたというよりも、気楽に連れ回せるアクセサリー代わりの武尊をキープしておけるなら、くらいの感覚だったのだろう。


 …冗談じゃねぇっつーの。


 以前の武尊だったら、それはそれでお互いさまだと大した痛痒も感じなかったが、本気の女ができた以上はそうはいかない。


 別に純愛だとか、一途な恋とか、そういうのを待ち望んでいたというわけではなかったけれど、ひまりの一生懸命さや純朴さを目の当たりにしていると、彼女を傷つけたくない…そう素直に思える。


 そんな自分が妙に青臭くて馴染まないが、それはそれで悪くないと思えるのから不思議だった。


 初恋なんて遠い昔の出来事だが、その時でさえそんなことを大真面目に思った覚えがないだけに、余計に新鮮で…気恥ずかしい。




 「時間できちまったな」