パンプスとスニーカー

 「それはないけど」

 「あ、ないんだ?」

 「…ただこれまでいいなって思った人とかはいたけど、付き合ったりとかそういうのは初めてで」

 「なるほど」




 ひまりは特に美人というわけではなかったが、それなりに愛想も悪くないし、物柔らかなタイプ。


 それでいて優柔不断ということもなく、明朗快活で活動的だ。


 まったくモテないということもなかったのだが…。




 「なんていうか、好きかなぁって思っても、告白とかする前に相手の人が卒業しちゃったり、あたしが東京に出てきちゃったりで…」




 ようはタイミングが合わなかったということなのだろう。


 そこにはひまり自身の家庭の事情というものも大きくあったかもしれなかった。




 「じゃあ、北条くんが初カレなんだ?」

 「は、初カレっ」




 20才もすぎて、たかだか彼氏のことを聞かれたくらいで、一々照れてる様が、美紀からすればおかしいやら可愛いやらで。


 …こういうとこに惚れたのかなぁ。


 しかし、美紀からすれば、武尊の好みは大人というか、サバけた美人がタイプなのだから、庇護欲をくすぐられて…というのはあまり考えられない。


 しかし―――、




 「そうかぁ」




 今にもため息をつかれそうな声音に、美紀の顔を伺う。




 「…いや、あたしが口を出すことじゃないけど」




 それだけで、何を言いたいかわかってしまった。


 以前にも武尊の女癖のことで忠告されていたのだ。


 その時には、単なる誤解――武尊と付き合ってるというのは本当のことではなかったので、ひまりの方も適当に誤魔化して話は終わったのだが…。


 …そうだよね、武尊って今までにもたくさん付き合ってた人がいるんだっけ。


 その時には気ならなかったことが、急に気になってくる。




 「その…武尊って、そんなにたくさんの人と付き合ってたの?」